01.いじめ
俺の学校、南陽北高校には裏サイトがある。管理人は誰かはわからない。いつできたかもわからない。こんなことは裏サイトではよくあることらしい。普通のと少し違うのは、教師にばれないようにダミーのサイトが存在していること。みんなプロフなどにこのダミーのURLを張り、教師を騙すわけだ。本当のURLは入学式の後、先輩達から教えられる。よくわからないが、これが伝統らしい。
その裏サイトに今日も俺、三野 勇之進(サンノ ユウノシン)は入り浸る。理由は特にないと言えば嘘になる。だいたいみんなそうだと思うが、自分がもし裏サイトで悪口を言われたりしていたらどうしよう、とか、そういう思いが勝手に裏サイトへと足を運ばせているわけだ。
裏サイトには一クラスに一個チャットが設置されている。そして、チャットには個別にパスワードがあり、これを入れないと入室はできない。パスワードは管理人にメールを送ると貰えるようになっている。これも伝統らしいが、まどろっこしいのでどうにかしてほしい。
今、時刻は午後八時半。この時間なら、常時四人はログインしている。案の定、俺を含めた見物人が二人、ログインしているのが五人いた。左から、『WAT、チュウ、ラン、ブルー、光神』
『ラン:暇だ〜!!!』
『WAT:暇だ〜!!!』
『ブルー:公がいりゃあ暇つぶせるのにな』
『WAT:だなwwwあいついじるの楽しいもんなwww』
公と言うのはあだ名。そいつの本名は、羽村 敬貴(はむら としき)。俺の親友だ。いや、だった。
としきとは小さい頃からの友達だった。家が近く良く遊んだりした。としきの家は金持ちだ。だけど俺はそんなことは気にせず仲良くしていた。その後、俺達は同じ高校に進学した。ニ年になると同じクラスにもなった。毎日が楽しかった。だが高校生に上がると、金目当てに近づいてくる連中が増えた。
それが段々エスカレートしていったある日、俺はとしきに「あいつらは金目当てで近づいてきてる。あんなのとつき合うのはやめろ」と忠告した。としきは「いくらユウでも俺の友達を悪く言うと怒るぞ」と声を荒げた。だけれど彼も思う節があったらしく、ある日金をせびられた時、「今月はお小遣いピンチなんだ」と言った。すると、奴らは急に手の平を返し、いじめが始まった。その結果が……
『ブルー:暇だし公の殺し方考えようぜ!』
『WAT:なんだよそれwwwいいなwww』
これだ。としきは俺にまでいじめがいかないように俺との縁を切った。だから親友だったというわけだ。
『ブルー:後ろから首絞めるとかはどうよ?』
『WAT:バッカwww殺すなら後ろからナイフでグサッとだろwww』
『ラン:ボコボコにしてから川に流すとかは?』
『WAT:ちょwwwランさんパネェっすwww』
『チュウ:そこらにしておけよ』
『WAT:なんだチュウ そんなこと言うとレイプしちゃうぞwww』
『ラン:レイプは女にやるもんでしょ?』
『ブルー:じゃあ逆レイプしちゃうぞwww』
『WAT:公にもしちゃうぞwww』
『ラン:ワラ』
『WAT:www』
『ブルー:www』
その後もこの腐った談笑は続いた。いつの間にか見物人は俺だけになっていた。きっと見るに耐えなくなったのだろう。俺も気分が悪くなったのでパソコンの電源を落とした。こんなことが起こっても何もしてやれない自分が苛立たしかった。こういう時にはさっさと寝てしまうに限る。きっとこの悶々とした思いも明日には消えているはずだと思った。
そう思って眠りに就いた。次の日、クラスメートが一人殺されたことを知るまでは、この気持ちも忘れることができた。
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