03.内情・外情

 殺されたのは里中 壮平(さとなか そうへい)。昨日の夜十時頃、コンビニへ買い物に行った帰り道に何者かに襲われたらしい。鉄パイプのようなもので頭蓋骨が陥没するくらい滅多打ちにされていたので、何者かの恨みからだという見解がとられた。
「いい奴だった」――同級生からのインタビュー。
「小学校の卒業アルバムには――」――被害者が映えるようにとメディアのいいとこ探し。
 ここまでがテレビで流れていた情報だ。かなりショッキングな事件だったので、学校にはたくさんの記者や報道各所がやって来た。学校側は対応に追われ、本当はそのためなのだろうが、生徒の心のケアがどうのと言ってその日は休校になった。
 そしてここからがチャットでの俺が見た範囲での反応だ。

『チュウ:なんでそうへいが殺さなきゃなんないんだ』
『ラン:……』
『WAT:ちくしょおおおお』
『光神:御冥福をお祈りする』
『HMT:いい奴だったのに……』

 里中は明るく、クラスのムードメーカー的な存在だった。彼は誰にでも優しかった。そう、としきにも。
 こんなことがあった。としきが教科書を忘れた時、里中は「一緒に使おうぜ!」と教科書をさしだした。当時、いじめがクラスに広まりみんなとしきを避け始めていた時期だったので、としきはきっと嬉しかっただろう。それは俺も嬉しかったし、としきのために何もできない葛藤の中にいた自分の救いにもなっていた。

『チュウ:誰がやったんだよ……』
『ラン:そうへい……』
『ムラ:(ノΔT)』
『WAT:あいつがやったんじゃ……』
『HTM:あいつ?』
 その時点で俺はそれが誰だか気づいた。こういう時一番に彼らの脳裏に浮かぶ存在。立場の弱く、悪者にするのに都合のいい奴。
『WAT:公だよ公 あいつには動機もあんだろ』

 やはり、と思うと悲しくなった。でも、としきに里中を殺す動機があった?どういうことだ?考えても思い当たる節がない。

『ムラ:確かにな……』
『WAT:しかもあいつ今日休んでたし』
『チュウ:おいやめろよ』
『WAT:でも怪しいじゃんかよ。里中を恨んでるのなんて公くらいだろ』
『チュウ:証拠も無いのにそういうこと言うな。死んだそうへいも悲しむだろ』
『ムラ:そうだな、悪かった……』
『WAT:ごめん……』

 その後、しばしが沈黙が続いた。しかし、としきがあの優しかった里中を恨んでいたとは、いったいどういうことなんだ?もしかして裏で何かあったのだろうか。
 まあとりあえず矛先がとしきから外れたのにはほっとした。だけど、モヤモヤするものが胸の奥に残った。
 それにしても今日はいる奴が多い。それだけ里中の死は衝撃的だったということか。

『あああ:落ちる』
『運営:あああ様がログアウトしました。』
『あんず:私も雪崩落ち』
『WAT:乙』
『ラン:Bye-bye(・ω・)ノシ』
『運営:あんず様がログアウトしました。』

 この空気に耐えられなくなったのか、二人が落ちると同時に一気に数人がログアウトした。と同時に一人ログインしてきた奴がいた。

『運営:鬼様がログインしました。』

 そしていきなりそいつはこう言った。

『鬼:里中を殺したのは僕だ』

 チャット内は騒然とした。それは当然だろう。なんせ殺人事件の犯人を名乗る奴が現れたのだから。だが、急に現われた奴が言った言葉など簡単には信じられないのは当たりまえだ。『嘘まる分かり』『証拠が欲しい』そのような書き込みが多くされた。
『鬼:証拠は無いけど証明はできる』

 この返答で十中八九悪戯だということが露呈された。そこからは罵声も飛びかい険悪なムードになった。だが当事者である鬼はそれを苦にもせず話を続ける。

『鬼:次は証拠も持ってくるよ。楽しみにしててね』

 そう最後に更なる殺人を示唆させる言葉を残し、鬼はログアウトした。まあ悪戯だろうからと、その時はさほどみんな気にした様子は無かった。  だが、この風のような唐突な出来事は、次の日、クラス内の会話の話題を独占した。