04.みんなで騒げば怖くない

「ねえ、チャットのあれ、見た?」
「みたみた!あれ本物かな?」
「なあ、チャットの書き込み怖くね?」
「お前あんなん信じてるのかよ」

 次の日の学校では、チャットを見た人達が話をクラス中に広めていた。証明って何だろう?また誰か死ぬのかな?そんな憶測がクラス内を飛びかった。だが俺の考えは、本物なら怖いなという程度だった。
 昼休み、クラス内での会話は大半がチャットの話で埋め尽くされていた。
「ねえねえ!もし襲われたらどうしよう!?コワイー」
 女子グループの一人が大声で言った。それに便乗するかのように同じグループの女子達も口々に騒ぎ出す。さながら一匹が暴れたらみんな暴れだす鶏群れのようだ。何人かの男子がその群れを睨みつけた。その視線にはきっと「誰もお前らは襲わん」という心叫びが込めてあるのだろう。そう感じたのは、俺もその一人だからだ。
「大丈夫!俺がいるぜ!!」
 ダンベルを振り回す、個性的な男子がその群れに無謀にも飛び込んでいった。
「は?桜庭マジキモイんだけど」
「あんたに守られるんなら死んだ方がマシだし」
「キモイー」
 彼は鶏の群れに興味本位で飛び込んだバッタだ。その末路は身も心もずたずたに引き裂かれてしまうだろう。
「ダイキくん、ほんと〜?」
「はいはい。のりはこっちきなさい」
 のり子と委員長の横槍で一瞬会話に間があいた。逃げるなら今だ桜庭!と一人で暑くなった。
「しかもあんた守って貰わなくてもキョウちゃんがいるし!」
「そうだし。空手部女主将だもん」
「あんたより数段マシだし!」
「えー……。私が守るのか……?」
 当の本人である高橋 京(たかはし きょう)は嫌そうな顔をしていた。能ある鷹は爪を隠すというやつだ。きっとそうだ。
「高橋も含めて、俺はみんなを守ってみせる!」
「「「キモッ」」」
 見事にみんなハモった。グループの結束力がその一言で遺憾なく発揮された。
 それにしても昨日クラスメートが一人死んだとは思えないくらいの盛り上りだ。少し不謹慎じゃないか。そう思った。
「隣、いいか?」
 急にメガネをかけたインテリ風の男子が俺に声をかけてきた。
「ん?手久野か。いいけど」
 テクノは俺の隣の席に座るとみんなが騒いでいる方を見た。テクノが隣に座ったものの、話題はなく気まずい空気が流れた。
「面白いよな」
「えっ?」
 脈絡のない彼の言葉に、俺は少し戸惑った。
「里中の席。騒いでる奴らの中心にあるんだぜ。あいつクラスのムードメーカーだったから。勝手に周りに人が集まってるんだよ。死んだ後でもさ」
「!?本当だ……」
「だろ?むしろああやって騒いでる方がみんな落ち着くのかもな」
「……」
 さっきあんなのは不謹慎だと思ったが、あれは一種の自衛本能なのかもしれない。悲しい思いをしないように、その悲しみを殺すための。
「なんていうか、淋しいな」
「お?サンノは意外と感性が豊かなんだな」
「からかってる?」
「誉めてるんだよ」
 その後また会話は途切れたが、俺達はその騒ぎ楽しむように眺めていた。あの中の一人がまた殺されるとも知らないで。