放課後、私達は早速行動に出た。まずは現場検証。
「何か手掛かりをみつけるぞー!」
「「お〜」」
とは言ったものの、別に専門知識があるわけでもない私達は、ただぼーっとサンノ君のであろう血の跡を見つめていた。
「ね〜なんかわかったあ?」
「全然。ノリは?」
「わっかんない!」
「ごめん。聞いた私が馬鹿だったわ……」
その二人を終始無言で見つめていたテクノ君は、眼鏡をかけ直すと口を開いた。
「よし、じゃあ自宅訪問するか」
「えっ?」
十五分後、私達は電車に揺られていた。ノリは乗って直ぐに寝てしまって、実質テクノ君と二人きりだ。会話が無くて気まずい。どうにか間を保たなければ!
「あ、あの」
「ん、何?」
「ほら、あの、えと……。そう!二人の家、分かるのかな〜って」
「ああ。先生に線香あげに行きたいって言ったら泣いて教えてくれた」
「へぇ〜。す、凄いね」
「凄いか?」
「え、いや……」
うああ。
こうなれば最終手段。寝たフリっ……! そうすれば何も……何も気にする事はないっ……!
「あ、委員長。次で降りるから金子起こしてくれ」
「え、あっ……。うん」
寝たフリをしようとした瞬間だったので非常に気まずかった。 ノリを起こし、電車を降りた私達は、まずはハムラ君の家に向かった。二人とも同じ中学出身で、最寄り駅も同じなので近い方から行くことにしたのだ。
最寄り駅から徒歩五分で閑静な住宅街に出た。そこには場違いな大きな家が建っていた。普通の一軒家二つ分くらいか。そして家を囲む大きな塀と門があり、門にある表札にはくっきりと『羽村』と書かれている。
「おっきいねえ〜!」
「大きいわね」
「大きいな」
私達はその家の前に立ち尽くしていた。ハムラ君はお金持ちなのは聞いていたけれど、まさかこんなに大きな家に住んでいる程とは。
「あれ〜、インターホンがないよ?」と入口の門の周りを物色しながらノリ。
「家の入口にあるな」と門から覗きながらテクノ君が言う。
「でもこれ開かないよ〜?」
思いっきりがしゃがしゃとノリが門を揺らす。
「あなた達……何しているの?」
「「「えっ?――」」」
「――何だ、とし君のクラスメートだったのねえ」
有らぬ疑いをかけられた私達は何とか事情を説明し、事なきを得た。まあ疑われてもしょうがない事をしていたんだけれど。
「じゃあ家に入って入って」
そしてこの私達を先導している気さくそうなおばさん。この人がハムラ君のお母さんだ。
リビングに入ると、すぐ隣の座敷にひっそりとハムラ君の遺影があった。私達はお線香をあげると静かに手を合わせた。
「あ、これつまらない物だけど。どうぞ」
」
そう言っておばさんが出したのは高そうなチーズケーキだった。雑誌でも見たことがあるやつだ。
「とし君も喜んでるわ。ありがとうね」
おばさんは本当に嬉しそうだった。
「この間も一人来てくれたのよ。確か同じ制服だったわねえ」
「そうなんですか」
私が相槌をうっている間、ノリはチーズケーキのおかわりして、テクノ君は部屋をきょろきょろ見渡していた。何て自由な人達なんだろうか。
対する私は相槌をうちながら話を切り出す機を伺っていた。だけど機を見つけられない私はテクノ君に目配せをした。テクノ君は一回頷くと眼鏡を人差し指でクイッとかけ直し口を開いた。
「すいません。僕達は今日はお線香あげるために来ただけじゃないんです。実はあの事件について調べに来たんです」
「あらそうなの。まあ薄々気づいてたわ」
意外な反応に私は驚いたが、テクノ君は怯む事も無かった。彼は弁護士かなんかに向いているなと思った。
「この間も同じ学校の子が一人来たからねえ。僕はこれで終わらせませんって言ってたわあ」
私達の他にもあの事件について調べている子が居るらしい。もしかしたら協力出来るかもしれない。
「そうそう。その子に渡しそびれちゃったのよね。はい、これ」
そう言っておばさんは遺影のお供え物から携帯電話を掴むと私に手渡した。
「いいんですか?」
私はそう聞いたが、内心分かっていた。おばさんもこの事件はただの自殺じゃないと思っている。だから私達にこれを託した。真実を知るために。
「うん。役立ててね?」
「はい!後、絶対真相を解明してから返しますから!」
「うふふ。ありがとうね」
そして、私達はもう一度遺影に手を合わせるとハムラ君の家を出た。次はサンノ君の家だ。外は薄暗くなってきていたので、私達は急ぎ足で向かった。