翌日、つまり私達が襲われた次の日。教室に入る前からでも分かるくらい、教室が何やら騒がしかった。
「おはようさん委員長。……ってなんでこんなに騒がしいんだ?」
その声に振り向くと柔道部女主将の高橋 京(たかはし きょう)が立っていた。
「あ、キョウちゃん。おはよ。私も今来たところだから……」
そう言って私とキョウちゃんは教室に入った。教室の真ん中に固まっている集団の目線が、一斉に私達に集まる。
「委員長だ!おい!みんな委員長が来たぞ!!」
一人のかけ声を皮切りに、みんなが私の元に詰め寄った。
「ねえ!昨日襲われたって本当!?」
「裏サイト見たか?」
「テクノ君死んじゃったって本当!?」
目が回るような質問責めに一瞬意識が遠くなった。
「ちょ、ちょっと!一気に言われても分からないわ!」
「ふっ。ここは俺に任せて貰おうか」
人ごみを掻き分け、私の前に立つ一人の男。その名は……。
「の、野村君」
野村 光。オタクグループに所属しながらもクラス内の全ての人間と平然と接することができる男。イケメン。里中君に次いで人望がある。
「そんな俺が君達に分かりやすいように状況を説明するぞ!」
「説明から続けるなよ」
キョウちゃんの柔道部仕込みの突っ込みが野村君の胸元にクリーンヒットした。
「あぐふっ。こ、これは怪力美少女萌えな俺には堪らない――」
「さっさと説明……しような?」
「は、はひ……」
そして……。
「つまり、まとめると委員長達が昨日襲われた。それと裏サイトに鬼から書き込みがあったってことさ」
「野村君すごくまとめたね……」
「まあでも大体分かったけどな」
その後、私の口から大体の事のあらまし、テクノ君の容態などを伝えた。
野村君は鬼と私達を襲ったのは同じ人物だという可能性が高いと言っていた。まず見せしめに私達を殺そうとしたのだろうと言うのだ。その考えはみんなに恐怖を植え付けた。考えてみれば前の鬼が起こしたと思われる事件から一カ月も経っていない。それに人が死ぬということには、一週間前のサンノ君達の事件もあって、みんな敏感になっているはずだ。
そして鬼の言うゲーム。これが何なのかというのがその後の論題だった。
「俺はみんなで殺し合いだと思ったけど、あり得る?」
「絶対ないと思う」
最終的な結論は授業開始の為に出なかったが、取り敢えずは様子見しかないだろうと私は思った。
ちなみにノリは自分が襲われたのに自覚がないのかと思うくらい今日も元気に登校してきた。
それに引き換え、私は廊下で一人になると背中に恐怖を感じてしまう。なのでそんな彼女が羨ましかった。
でも一番変だと思ったのは桜庭君だった。
「変身っ!スーパーダイチィ!」
いや……元々変は変なのだけれど。何時もの桜庭君はただの変人だ。でも昨日の桜庭君は少なくともそんなことは微塵も感じさせない……。
『救世主(ヒーロー)参上!』
いや、そう言うと語弊があるけど……。まあとにかく昨日の桜庭君はいつもと違った。まるで普段は仮面を被っているような。
私はクラス委員長だけれども、みんなのことを余りにも知らなすぎる気がした。
そしてそんな私をよそにクラス内の状況は変化していく。 不登校の生徒が出たのだ。それも男子一人女子一人の計二人。
私の目の届かない所で何かが起こっている。
今の私に分かるのはそれ位しかなかった。